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日建工学のプロフェッショナル

日建工学のプロフェッショナル 松下紘資(国際事業部 兼 技術部技術課課長代理)

津波や偶発波浪に対して防波堤を粘り強くする補強工法 『サブプレオフレーム』の開発に震災の1年前から着手。

 震災時に津波で防波堤が倒壊するシーンを映像で見たことがあると思いますが、当社の「サブプレオフレーム」は、こういった災害を防ぐために開発した、直立防波堤を粘り強くする港内側の補強工法です。
 サブプレオフレームは孔のあるフレーム形状のブロックで、孔部に中詰材として自然石を入れ、下層の石(マウンド石・被覆石)と中詰石のかみ合わせによって滑動抵抗力を増やし、既存防波堤の安全性を向上させます。従来にはなかった新しい考え方による製品で、東日本大震災の1年前から開発に着手していました。
 この製品を作るきっかけとなったのは、地球温暖化による台風の大型化や爆弾低気圧の影響で、設計波を大きく上回る波が押し寄せるようになったことです。構造物は決められた設計波に基づいて設計しますが、その設計波より大きな波にさらされると防波堤が被災する危険性が高くなります。このような設計波を大きく上回る巨大波浪に対して防波堤を粘り強くするために、京都大学防災研究所と共同でサブプレオフレームの開発に着手しました。

松下紘資さん

京都大学とのコラボで独創的な形状の製品化に成功。アジア初の若手最優秀論文賞も受賞。

 サブプレオフレームの開発は、いままで培ってきたノウハウに頼れないゼロからスタート。あらゆる実験がすべて当社のノウハウになるので、技術者としてやりがいがありました。
 いちばん苦労したのは、ブロックの形状をどうするかということです。ブロックの高さ、孔の大きさなど、いちばん大きな抵抗力を発揮する最適な形を何度も陸上での引張試験を積み重ねて、検証していきました。この引張試験は、ウインチを使ってブロックを引っ張るのですが、毎回、トラブルが発生します。どんな実験も順調に進むことは少ないので、コツコツと進めていきました。

京都大学とのコラボで独創的な形状の製品化に成功。アジア初の若手最優秀論文賞も受賞。
松下紘資さん

 陸上での引張試験のあとは、設計摩擦係数を検証するため、水理模型実験を行います。実物のブロックは幅3メートル、20トンというスケールですが、40分の1の小さな実験用モデルで実験するので、散漫にならないよう細かいディテールをすりあわせていきます。私自身、仕事は「完璧主義」をポリシーにしているので、どんな局面でも手を抜かないで取り組んでいました。
 これらの実験は京都大学の実験場で行ったのですが、構造物の特性など私が知らない専門知識を平石教授から教えていただき、苦しいときには「もっと頑張ろう」という気持ちが生まれましたね。特に参考になったのは、海岸構造物として石を使う場合のアドバイスや知識。当社はコンクリートブロックメーカーなので石に関する知識があまりなく、製品化していく上で本当に役に立ちました。

 サブプレオフレームの研究開発の成果をまとめた論文は、2013年の国際航路協会(PIANC)若手最優秀論文賞をいただくことができました。アジア初の受賞ということで、国土交通省港湾局が受賞に関してプレスリリースを出してくれたことがうれしかったです。

時代の一歩先をいく製品開発と、海岸工学の博士号取得、アジア方面への海外展開が夢。

 現在、サブプレオフレームは、東北の震災復興において、八戸港に20t型が採用されています。これまでに日本全国でプレゼンテーションを行ってきていて、製品自体がきちんと照査されて信頼性の高いものであることを理解してもらえれば、さらに普及すると思います。もし南海トラフ地震で津波が起きれば太平洋側に危険な防波堤が数多くあるので、そういう場所で貢献できるよう、国の研究機関や設計機関に対して今もプレゼンテーションを続けています。
 このサブプレオフレームは防波堤用に開発したものですが、自然石を使うサブプレオフレームは環境にも優しいので、護岸や潜堤など他の構造物への応用にもチャレンジしたいと考えています。

時代の一歩先をいく製品開発と、海岸工学の博士号取得、アジア方面への海外展開が夢。
松下紘資さん

 私の今後の目標は、いくつかあります。いま京都大学の社会人ドクターなので、博士号を取得すること。国際事業部の仕事も兼務しているので、海外でも仕事を成功させたい。特に成長著しい東南アジアにおいて、優れた当社の製品を広めたいと思っています。

 平成16年に入社して今年で10年目。海岸工学に関する知識や実験ノウハウは誰にも負けないという気持ちで仕事に取り組んできました。そういう気持ちを忘れずに、これからも技術者として仕事を通して成長していきたいと考えています。